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かつて起点であったこの町で

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Journal of Términus

かつて起点であったこの街で

川越・久保町にお店を開く理由

私たちの店名である「テルミニュス(Términus)」は、フランス語で「終着駅」、そして物事の「境界」や「起点」を意味する言葉です。

私たちが新しいお店の拠点として選んだのは、埼玉県川越市にある「久保町」という場所。一番街に代表される蔵造りの街並みがもたらす華やかな喧騒からほんの少しだけ距離を置いた、静けさと歴史の重みが心地よく残るエリアです。

実はこの久保町の目と鼻の先には、かつて「大宮町駅(のちに久保町駅へと改称)」と呼ばれる鉄道のターミナル駅が存在していました。明治の世、川越の街と外の世界を結び、多くの人々の運命や物流が行き交う起点として活気に満ちていた場所です。

かつて多くの旅人が足を踏み入れ、新たな物語の「起点」となった土地の記憶。そして、私たちが理想の製菓ロジックを突き詰めた末に行き着く「終着点」。このふたつの交差点として、久保町という場所を選びました。

時代の移ろいとともに線路は去り、駅はその歴史的役目を終えましたが、今もなおこの久保町の路地には、どこか穏やかでゆったりとした独特の時の流れが漂っています。

私たちが仕立てるお菓子は、単に空腹を満たしたり、いたずらに甘いものではありません。噛み砕いた瞬間に響く微細な音、体温によって時間差でひらく香りの余韻、細部まで理(ロジック)を詰め詰めた私たちの表現は静けさの中で心を落ち着かせてこそその本来の姿を現します。

都会の慌ただしさや観光地の賑わいから一歩腰を落ち着かせ、目の前の一口とじっくり向き合っていただける静寂。久保町が纏う落ち着いた空気感は、私たちが目指す「お菓子との豊かな対話」を成立させるために、なくてはならない最後のピースだったのです。

探求が行き着く「終着点」であり、日常に添える「新たな起点」であること。

職人として妥協のない論理を構築し、理想の焼き色と食感を具現化した「終着点(テルミニュス)」として、日々オーブンからひとつひとつ丁寧に生み出される品々。

そしてそのひと包みを手に取り、口へ運んでいただいたその瞬間が、召し上がる方にとって日常の中に訪れる心地よい時間の「起点」となること。店名に込めたこの二面性の思想は、久保町という歴史ある土地の背景と美しく重なり合います。

かつて人々が行き交い、それぞれの旅路へと想いを馳せた久保町の景色に敬意を払いながら、私たちはこの地に深く根を張り、静かに、そして妥協のない火入れをしていきたいと考えています。

歴史の記憶と穏やかな静寂が交差する久保町のお店で、皆さまをお迎えできる日を心より楽しみにしております。

この場所から広がる深い香りと「余韻」を、ぜひ体感しにいらしてください。

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